私がたまに会ったときに英語を教える女性が言いました。
「私、こんど子供が習ってる英語の学校に行くことにしました」
「そう、家族割引があるの?」
「ええ、6000円で週一回なんですけれど」。
「先生はアメリカ人?」
「いいえ、帰国子女です」
「私は帰国子女じゃないけど、ことばはひとりひとり経験が違うから、どういう先生がいいかはむずかしいわね。親によってもずいぶん違うだろうし」
「週一回でだいじょうぶでしょうかね、話せるようになるでしょうか」
「人にもよるけれど、英語が流暢になるというのは大人になった日本人の頭には大変な苦労だと思う」
「でもおたくは話すじゃないですか」
「ええ、でも大変だった。今でもよ。簡単そうに見えるでしょ?」
彼女はうなづく。
「藤原正彦が書いているけれど、血のにじむような努力だって。私もそう思う」
彼女の唇は開いてそのまま。眉の間が縮まる。
そういうわけで中国語もアラビア語も話せません。でもあきらめてもいません